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腫瘍中の塩の測定は乳ガンの診断と治療に役立つ可能性がある

Measuring Salt in Tumors Could Aid Breast Cancer Diagnosis and Treatment

By Jessica Freeborn

Medical News Today     2022.03.27

 

  アメリカでは毎年、数千人が乳ガンと診断されている。

  研究者達は、多くの場合致命的となる可能性がある乳ガンを診断および治療するための新しい方法を依然として発見している。

  新しい研究では、マウスの乳ガン腫瘍の塩濃度を検出するMRIがガンの重要度を判定し、化学療法の有効性を予測するのに役立つ可能性があることが判明した。

 

 アメリカでは毎年、数千人が乳ガンに罹患している。2022年だけでも、280,000人を超える女性がこの病気と診断された。スクリーニングは乳ガンを早期に発見するための最良の方法の1つであり、日を追うごとにより多くの治療選択肢が利用可能になってきている。しかし、研究者達は乳ガン腫瘍を特定し、適切な治療法を見つけるための新しい方法を見つけるために今も研究を続けている。

 British Journal of Cancerに掲載された最近の研究では、乳ガンの塩分濃度を測定することが、乳ガンの重症度と化学療法の有効性を判断する効果的な方法である可能性があることを発見した。

 

乳ガンと検診

 誰でも乳ガンになる可能性はあるが、統計によると、診断を受けるのは男性よりも女性の方が多い。家族や個人歴により、乳ガンのリスクがより高い人もいる。

 専門家は、乳ガンのリスクがある人には適切な検査を受けるよう勧めている。例えば、アメリカガン協会は、4554歳の女性は毎年マンモグラフィーを受け、55歳以上の女性は少なくとも隔年でマンモグラフィーを受けることを推奨している。

 

塩濃度は腫瘍を示す可能性がある

 今回の研究の科学者達は、腫瘍内のナトリウム濃度を調べることでガンの重症度を判定し、治療の有効性を予測するのに役立つかどうかを確認しようと努めた。研究者達はマウスを用いてこの研究を実施し、ナトリウム磁気共鳴画像法と拡散強調画像法を使用して乳ガン腫瘍を検査した。

 研究者達は、乳ガン腫瘍では非腫瘍領域と比べてナトリウム濃度が上昇していることを発見した。

 次に科学者達は、腫瘍の増殖速度を遅らせる化学療法の一種であるドセタキセルで腫瘍を治療した。彼らは、治療後に乳ガン腫瘍のナトリウム濃度が減少することを発見した。この結果は、医療専門家が乳ガンの特定に役立つ追加の方法としてナトリウム磁気共鳴画像法スキャンを使用できることを示している。

 研究者達は、ナトリウム磁気共鳴画像法スキャンの技術と拡散強調画像法を組み合わせることで腫瘍の分類が容易になると示唆している。この組み合わせアプローチは、乳ガン治療に対する反応をモニタリングする効果的な方法でもある可能性がある。

 研究著者のWilliam J. Brackenbury博士はMedical News Todayで、塩濃度が悪性腫瘍の早期シグナルとなり得る仕組みを説明した。

 医師は多くの場合、乳ガンの治療に複数のアプローチを採用する。乳ガンの種類と重症度によって異なるが、治療法には化学療法、手術、放射線療法などがある。

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  「この結果は、ナトリウムが治療に対する反応の有用なバイオマーカーである

可能性を示唆しているため、乳ガン治療にとって興味深いものである。」

   William J. Brackenbury博士

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 「ナトリウム磁気共鳴画像法は非侵襲的で造影剤の投与が必要ないという利点もある。」とWilliam J. Brackenbury博士は付け加えた。

 

ナトリウム磁気共鳴画像法を推奨するには時期尚早である

 この研究は乳ガンの診断と治療に有望な手段を提供するが、いくつかの限界があった。この研究は動物で行なわれたため、科学者達はこの検査方法が人間にも有効かどうかを判断するためにさらなる研究を行なう必要がある。また、腫瘍内のナトリウム濃度が治療にどのような影響を与えるのか、あるいは治療によってどのような影響を受けるかも不明である。研究者達は、ナトリウム濃度の低下が治療によるものか、それとも治療反応に寄与しているのか、確信が持てなかった。

 さらに、この発見はいくつかの以前の研究と矛盾する。著者らは、ナトリウム濃度はガンの種類と使用される化学療法の種類の両方によって影響を受ける可能性があると示唆している。彼等は、ナトリウム磁気共鳴画像法を改良して検査方法をより明確で価値のあるものにすることができることを認めている。

 研究者達は、この観察結果が乳ガン腫瘍における細胞内ナトリウム濃度の変化を示していると考えている。専門家が腫瘍内のナトリウム濃度の変化についてさらに研究を進めれば、より多くの治療選択肢が広がる可能性がある。

 さらなる研究では、ナトリウム摂取量と乳ガンリスクとの潜在的な関連性にも焦点が当てられる可能性がある。アメリカガン協会の最高患者責任者であるArif Kamal博士はこの研究には関与していなかったが、Medical News Todayに次のように指摘した。「この研究は、乳ガンの代替放射線マーカーの可能性についての非常に初期の発見を示している。これらの発見がマウスからヒトに当てはまるかどうか、また食事によるナトリウム摂取量と乳ガンのリスクとの間に何らかの関係があるかどうかを確認するには、さらに研究が必要である。」

 「乳ガン予防のメカニズムとして塩摂取量の変更に関する推奨事項をアドバイスするには時期尚早である。」とKamal博士は付け加えた。それにもかかわらず、この結果により、乳ガン治療に役立つ可能性のある診断検査の武器がさらに増えた。

 「高ナトリウムが腫瘍内で何をしているのか、そしてそれをどのよう最適に標的にして解釈できるのかをより良く理解するためには、さらに研究が必要であるため、これを広範な臨床用途に展開できるまでには、ある程度の道のりがある。」とBrackenbury博士は述べた。

 「我々の将来の研究は、画質と空間解像度を向上させるために、ナトリウム磁気共鳴画像法の感度を向上させる方法の開発にも焦点を当てる。」と彼は付け加えた。