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減塩が危険な理由

Why Salt Restriction is Dangerous

By Chris Kresser

sott.netより    2012.04.20

 

「公衆衛生当局から個人トレーナー、善意の親戚、そして勘定カウンターの人まで事実上すべての人が食事アドバイスを自由に提供する時代に、1つの勧告は、議論の余地のない福音の力で30年間にわたって続いている:少ない塩を食べ、血圧を下げ、長く健康な生活をする。」Gary Taubes, 1998

 

 私の最後の2論文で、私は人の食事における塩の歴史と塩の生理学的必要性を論じた。先史食事の多くの支持者は先史時代の低塩摂取量のエビデンスに基づいて塩を制限することを示唆している。この制限は、少なくとも5.8 g/dまでそしてわずか3.8 g/dまでの塩制限を示唆しているアメリカ農務省やアメリカ心臓協会のような様々な保健機関による推奨事項と一致している。そして我々の先史祖先が低塩摂取量であれば、確かに健康であるに違いない、本当か?

 

必ずしも正しくない。最近、一律の減塩ガイドラインに反対した証拠が増えてきた。低塩食は特に幾つかの慢性的な健康状態と生活様式要因の存在下で、深刻な健康への影響と高い全体的な死亡率を引き起こすかもしれない。本論文では、あまりにも低い塩含有量の食事をしている潜在的な健康リスクと同様に減塩推奨値を否定する科学的エビデンスを考察する。

 

長期間塩制限の深刻な健康結果

 塩誘因性高血圧は心疾患の原因として典型的に非難されているが、低塩摂取量は循環器系疾患による高い死亡率と関係している。アメリカ医学協会誌の2011年研究は、脳卒中、心臓発作そして死亡がより起こりやすい低塩摂取量帯を示している。中程度の塩排泄量と比較して、冠状心不全者について低塩排泄量と循環器系疾患死亡と入院との間に関係があった。これらの結果4 – 5.99 g/dのナトリウム排泄量について最低の死亡危険率を示している。(図1)

 もう一つの研究がこの観察を確認した;低ナトリウム排泄量が高い循環器系疾患死亡率と関係していただけでなく、基準線のナトリウム排泄量は高血圧発症率を予測できなく、収縮期血圧とナトリウム排泄量との如何なる関係ともより少ない死亡率または生存の改善に言い換えられなかった。

 

    図1 鬱血性心不全について推定24時間ナトリウム排泄量

       と循環器系疾患死亡、脳卒中、心筋梗塞、入院の複合

 

 低塩食は血液中のホルモンと脂質の増加に寄与している。アメリカ高血圧学会誌の2012年研究は、低塩食の人々はレニン、コレステロールそしてトリグリセライドの比較的高い血漿濃度を発生させたことを明らかにした。血圧のわずかな低下はこれらの相反する効果によって覆われ、塩制限は人口レベルでは正味でネガティブな効果を持っているかもしれない、と著者らは結論を下した。

 さらに、低塩摂取量は二型糖尿病の悪い結果と関係している。比較的高い全死亡と循環器系疾患死亡のために二型糖尿病患者は低塩食でより早死にし易いことを2011年研究は示した。さらに、2010年のハーバード研究は低塩食を二型糖尿病の前駆体であるインシュリン抵抗性の即時発症に関係付けた。これらの研究は二型糖尿病患者に塩制限を勧めるガイドラインの適切性に疑問を呈している。

 塩を制限することは特に耐久性のスポーツに参加する競技者についても問題である。耐久性競技者は自覚症状がなくても一般的に低ナトリウム血液、または低ナトリウム症を発症させることを最近の研究は示した。2002年のボストン・マラソンで、調査された488人の走者中の13%が低ナトリウム症であることを研究は明らかにし、他の耐久性教義の調査は29%までになる低ナトリウム症の発症を報告した。これらのナトリウム欠乏競技者の大多数は無症候性でまたは吐き気と嗜眠の穏やかな症候、脳浮腫、非心臓性肺浮腫などの重篤な症状になり、死ぬこともある。高強度または長時間の運動をしている競技者は発汗で失われた塩を十分に補給することは非常に重要である。

 塩制限は老人にとって特に危険である。低ナトリウム血症の高齢者は転倒や骨折、認知能力の低下が多い。低ナトリウム血症は急性疾患のある人々で特に有病率が高く、高齢者で一般的な結果である。これは一律の塩制限のために重篤な健康結果の危険性のある別の集団である。

 

どうして政府はまだ塩制限を勧めるのか?

 従来のヘルスケアの専門家達は、ルイス・ダールが塩は高血圧を引き起こすと言う「証拠」を確立した時の1970年代以来、塩制限を勧めてきた。彼の研究で、人に換算すると1,270 g/d以上:西欧社会の平均摂取量よりも50倍多い塩をラットに与えて高血圧を誘導した。ダールはまた高い塩摂取量の文化はより少ない摂取量の人々よりも高血圧になる傾向であるエビデンスを呼び起こした。

      

2 異なった地域と異なった人種の間で一日平均塩摂取量と高血圧発症率との関係

 

 しかし、インターソルト研究者達は混乱因子を管理しながらこの可能性のある関係を調査したとき、血圧と塩摂取量との相関はほとんど消えた。何らかの理由でこの矛盾したエビデンスは塩摂取量を制限することを正当化するためにまだ使われている。

 1998年に、ガリー・トーブスは減塩に対する論争上の科学的エビデンスと公共政策との衝突を強調してサイエンス誌に論文を書いた。減塩を巡る科学的不一致のほとんどは、塩を避けることの利益に対して与えられている世間の注目によってどのように重要になってきたかを彼は述べた。トーブスが10年以上前に説明したように、「一律の減塩を支持するデータは決して強制されるものではなく、そのような計画が予期しない悪影響を及ぼさないことをこれまで示して来なかった。」生態学的、疫学的研究で矛盾を解決するために設計された1988年のインターソルト・スタディは塩摂取量と血圧との間に如何なる直線関係をも示せなかった。2012年の今、長期間の減塩が人口の多くにとって深刻なリスクをもたらすかもしれないことを示唆するデータがある。しかし、主要な保健機関のガイドラインは、血圧の状態に関係なく全てのアメリカ人に減塩をまだ勧めている。

 要するに、ほとんどの人々にとって健康に良い塩摂取量の範囲がある。全食品食を食べているとき、ほとんどの人々は塩味に対する単なる生来の好みのために適正な塩の量を食べる傾向がある。事実、2世紀以上にわたる世界中の塩消費量は茶さじ1.5 – 3/日の範囲に留まっている。そのことは疾患に対して最低の危険率を維持しているように思える。

 我々の理想的な塩摂取量が制御されることを通して我々の身体は自然の塩欲求を持っている。古代食事、加工食品の排除により、食事中の過剰な塩は大幅に減少する。したがって、調理中に食べ物に塩を加える時、塩に対する自分の自然な好みに従うことに自信を持つことが出来る。言い換えれば、塩を取り上げる理由はほとんどない!