科学者達は腫瘍中の塩が乳ガンの診断と治療に
どのように役立つかを発見
Scientists Discover How Salt in Tumors Could Help Diagnose and Treat Breast Cancer
https://www.york.ac.uk/ 2022.04.25
乳ガン腫瘍のナトリウム濃度を分析すると、ガンの進行度や化学療法が効果を発揮しているかどうかを正確に知ることができることが、新たな研究で示された。
ヨーク大学とケンブリッジ大学が、慈善団体Cancer Research UKとBreast Cancer Nowの資金提供を受けて実施した研究で、研究者達はナトリウム磁気共鳴画像法を使用してマウスの乳ガン腫瘍の塩分濃度を検出する技術を開発した。
この技術を使用して、研究者達は乳ガン腫瘍を観察し、ガン細胞内に塩(ナトリウム)が蓄積されていること、およびより活動的な腫瘍ほど多くのナトリウムを蓄積していることを発見した。
次に、研究者達は18個の腫瘍のグループを抽出し、そのうちのいくつかを化学療法の対象にした。1週間後に腫瘍をスキャンしたところ、化学療法で治療した腫瘍では、ナトリウム濃度が低下していることが判明した。
器官
現在、イギリスでは毎年約55,920人が新たに乳ガンと診断されており、乳ガンは世界中の女性がガン関連死亡の主な原因となっている。
塩分濃度の画像化は、乳ガンの診断と監視に役立つ重要な新しいツールになる可能性があると研究者達は述べている。研究チームは現在、その結果がヒトの乳ガン患者でも再現できるかどうかを確認する観察研究を実施している。
理解
この研究の上級著者であるヨーク大学生物学部のWilliam Brackenbury博士は次のように述べている。我々の研究結果は、乳ガン腫瘍における高濃度のナトリウムは周囲の組織液ではなくガン細胞の内部から来ていることを示している。これは、乳ガン腫瘍の代謝活動に何らかの異常があり、健康な細胞よりも多くの塩分を蓄積させることを意味する。
「現在、ナトリウム磁気共鳴画像法スキャナーは全国に数台しかないが、我々の研究は、乳ガンを診断し、治療の効果を監視し、患者の生存率を向上させるための新しい技術としてナトリウム磁気共鳴画像法スキャナーを使用する道を切り開く。」
可能性
この研究の著者らによると、ガン細胞のナトリウム・チャンネルを遮断し、腫瘍の増殖と広がりを遅らせる薬剤が開発される可能性もあるという。Brackenbury博士が主導した以前の研究では、現在、てんかんの治療に使用されている薬剤が特定され、この薬剤はナトリウム・チャンネルを標的とし、乳ガンの実験室モデルでガンの進行を遅らせることが期待できた。
研究者達はまた、現在、通常の磁気共鳴画像法スキャンと比較して比較的ピクセル化された画像を生成するナトリウム磁気共鳴画像法スキャナーの解像度を向上させる方法を模索したいと考えている。チームは、ナトリウム･イメージングの信号品質を向上させるために、新しい高周波コイルや関連する冷却システムの設計などの新しい技術を開発したいと考えている。これにより、腫瘍内に最も増殖が活発なナトリウム・ホットスポットがあるかどうかの調査など、さらなる研究が可能になるであろう。
有力性
この研究の臨床共著者であるケンブリッジ大学のFiona Gilbert教授は、「我々はこれらの技術を臨床で活用できることに興奮している。」と述べた。
Cancer Research UKの研究情報マネージャーであるCharles Evans博士は次のように述べている。「この興味深い研究は、ナトリウム磁気共鳴画像法の使用が乳ガンの検出を向上させる強力な新しい方法となる可能性があることを示している。この技術はまた、乳ガンが治療にどのように反応するかについてより深い洞察を提供する可能性を秘めている。さらに、これらの技術は他の種類のガンにも応用できる可能性がある。しかし、この研究は初期段階であり、ナトリウム磁気共鳴画像法が患者に利益をもたらし始めるにはさらなる研究が必要である。」
革新性
Brest Cancer Nowの研究・サポート・影響力担当ディレクターであるSimon Vincent博士は次のように述べている。「患者が可能な限り最善の治療を受けられるようにするには、乳ガンを迅速に正確に診断し、治療に対する反応を注意深く監視することが極めて重要である。ナトリウム磁気共鳴画像法に関するこれらの革新的な初期段階の研究は、患者ケアを改善し、医療チームにより詳細な情報を提供する可能性を秘めている。我々は科学者達がこれらの発見に基づいて、臨床現場で患者に利益をもたらすために実際にどのように機能するかを理解することを楽しみにしている。乳ガンがナトリウムを蓄積する仕組みについても、この壊滅的な病気を治療する新たな方法の発見に役立つ可能性があるため、さらに研究されるべきである。」
